サンデル教授は問いかける

   

5月30日に西南学院大学の創立100周年事業のひとつとして、

マイケル・サンデル教授の対話形式の講義が行われたので、聴講

しました。テレビの「ハーバード白熱教室」で注目されましたのでご

存知の方も多いと思います。前から興味を持ってましたので、新聞

で実施を知ってから、直ちに申し込みました。定員が800名でした

ので楽観してましたが、当日の発表で約10倍の抽選と聞き、自分の

幸運に感謝しました。

講義はテレビと同様に、ある問題について、二つの選択枝から意見

を求めて、それぞれの立場からの説明を参加者にさせることにより

進行しました。最初は東日本大震災を経て、その後日本は良い方向

に向かっているか、それとも悪い方向に向かっているかという質問

でした。およそ、半々の挙手でしたが、それぞれの立場の意見も

興味深く、その後も問題は社会保障の問題にひろがり、文字どおり

白熱授業となりました。実は、ほとんどやらせではないかと、疑って

いたんですが、会場の発言者はガチンコでした。緊張してる人も多か

ったですが、若い人の熱気にビックリです。

少子高齢化、経済停滞等から、質問は日本における移民受け入れ

の是非になりました。ここが一番興味を惹きました。賛成の方は経済

活性化を中心に理路整然として、説得力のある説明でした。しかし、

反対の方は国民のアイデンティティーについてうまく説明できず、

もどかしい様子でした。

私も移民の受け入れに反対です。しかし、それについて私も理論的

に説明できず、講義の終了後も自問していました。

日本人であるということはどういうことなのでしょうか。

実は震災後に私のなかで確実に変化したことがあります。それはは、天皇

陛下の存在感です。私は従来は、天皇制については肯定も、否定もしない

立場を取ってきました。しかし、震災による、苦しみ・悲しみ・孤独に多くの

国民が打ちひしがられることとなりました。そのとき、天皇陛下はひたすら

国民のために祈って下さった。高齢を押して、被災地に足を運び、見舞い

また、計画停電の際は自主停電を実施され、国民と痛みを共有しようとして

頂いた。多くの国民が天皇陛下に苦しみを癒されたと思いました。それが

震災後も天皇陛下に恥じる行動はとれないという無意識の自制となり

略奪行為等を防止し、寄付やボランティア活動の増加に繋がったと思い

ます。

天皇は国民統合の象徴とされていますが、この意味を今回ほど痛感したことは

ありません。天皇は君主ではありません。また、当然にして神でもありません。

日本国の国父なんです。多くの国民は今回の震災のなかで、天皇陛下に

自らの父や祖父を重ね合わせたと考えます。天皇陛下が自分のために祈って

くれているということで、国民の動揺は少なかったのだと思います。

今回の国家的危機で、天皇陛下のもと日本国民は連帯しました。逆から言えば

天皇陛下のもと連帯できるの日本人なのだと思います。今後も国難が続くことが

予想されます。大震災を通して、日本人特に若者の多くが大義に目覚めました。

そのことを今回の講義で確認しました。大義の勇を持った若者がいる日本です。

勇者が天皇陛下のもとで連帯するのですから、どんな困難も怖くありません。

きっと、10年後、20年後、日本は世界から尊敬される国になっていると思います。

サンデル教授は日本の輝ける未来を示唆してくれたんだと思います。

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